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70 新車について

 つい先日「ドライブについて」を書いたが、実は、車を買い替えることになった。
 新車である。これも先日書いたとおり、純日本車だ。グレードは――もしかすると少々高めかもしれないが、これから10年20年と乗るつもりでいるので、安全性能や飽きのこなさを考えた結果そうなった。もちろん、小さい買い物ではないから、その他のスペックについても、見た目を含めて吟味している。
 いずれにせよ、前の車も13万キロ乗ったので、久々の買い替えとなったのだが、いざディーラーに行ってみて、今の車の「ハイテクぶり」にはちょっと驚かされた。
 バックドアが自動で開く。衝突安全機構が備わっている。俯瞰カメラがある。いちいち「へえ! 今はこうなっているのか!」と言うたびに担当者のまだ三十前だという男の子は苦笑いをしていた。ともあれ、何よりも驚いたのは、サイドブレーキがないことだった。
「……あれ、サイドブレーキ、手元にも足元にないんですけど、どこにあるんですか?」
「サイドブレーキはないんですよ。この車には」
「サイドブレーキが……ない……だと!?」
「ええ。こちら、ご覧ください。このスイッチが電動パーキングブレーキというものになっていまして」
「電動パーキングブレーキ……?」
「はい。パーキングに入れると自動的に作動してタイヤをロックするんです」
「自動的に作動……」
「で、パーキング以外にシフトすると自動解除するんですよ」
「自動解除……な、なるほど」とりあえず、頷いておいた。
 率直に言って、浦島太郎のような気分だった。高々数年で、車はここまで進化するのだなあ、僕に使いこなせるのだろうか? 
――などと感心している間に、いつの間にか目の前に幾つかの見積もりが出て、流れ作業のように契約書が登場し、実印を突き、「では、お世話になります。よろしくお願いします」と頭を下げていたという次第である。担当者はほくほくの笑顔だったが、それはきっと、僕が極端に値切りもしないいいお客さんだったからに違いない。
 というわけで、年内か遅くとも年明けには納車される予定と相成った。
 久し振りの大きな買い物に戦慄もしているが、心からわくわくしているのでありました。

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