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66 組織について

 僕は兼業作家なので、文筆業とは別にある組織に属している(詳しくは言えないが、ごくごく普通の組織です。)。
 一方、文筆業においても、このたび二つの組織に属することになった。本格ミステリ作家協会と、日本文芸家協会である。
 本格ミステリ作家協会はその名のごとく、本格ミステリ作家が集まって作られた組織だ(そのままだ)。法月綸太郎さんと円堂都司昭さんに推薦をいただき会員になることができた。また日本文芸家協会については、何らかの基準を満たしたらしく、会員に推薦できるというご通知をいただいたので、そのまま素直に会員になることにした。
 いずれにせよ、腕一本で食っている作家にとって、何かがあった場合に備えた互助的役割を果たす組織というのは、とても大事なものだ。
 特に、日本文芸家協会には、同じ作家組織である日本推理作家協会と同様、健康保険組合である文芸美術国民健康保険組合(文美国保)の加盟団体である。つまり国保ではなく、健保組合に加入できるということである(保険料等々で得することが多い)。なお僕は本業の方で一般の健康保険に加入しているので今のところ文美国保の恩恵は受けていないが、いつ本業が業績不振勤態不良リストラ等々でクビになるかわからないので、万一のセーフティネットとしてありがたい限りである。
 もっとも、こうした組織を疎ましく思う作家もいるだろうとは思う。せっかくフリーになってやったのにまた組織とは辟易するし、少なくない会費を毎年払うのも負担だ。そうした考え方ももちろん認められるべきものなので、だから基本的に加入は自由だとしており、非加入ももちろん許されている。僕は加入したけれども、それは、こうした法人格に互助的性格が付与されていることに鑑み、可能な限り加入しておくことが、文芸の振興に間接的に寄与していると思っているだけのことなのだ。
 ところで、どこで見かけたのか忘れたのだが、僕の小説に対し「こんなのは文学ではない」と言い放つ匿名の方のコメントがあった。
 率直に、ああ、そうだろうな、と思った。僕自身も自分の小説を文学だなどとはこれっぽっちも思ってはいない。僕の小説はただのエンタメであって、読み捨てられるべきもの、しかし、特に若い人に本が面白いと思ってもらえればいい、そんなつもりで書いている。文学のような高尚なものではないのだ。
 したがって、もちろんは「文学者」ではないのだけれど、先述のとおり、どうやら「文芸家」ではあるらしい(実際そうであるから会員に推薦してもらえたのだろう。)。心からありがたい限りだ。文学と言われると少々暑苦しいが、文芸ならなんとなくしっくりくる。まさしく、僕の小説はクラシックではないがJPOPのようなものなのだ。
 それにしても、「こんなのは文学ではない」とのたまった御仁は、ならば「何が文学だ」と考えているのだろうかが気になる。タイトルにあるとおり一介の三文文士である僕にすらありがたくそのようなコメントを残してくださるくらいなのだから、きっと、さぞや気高く、文学への深い造詣もお持ちの方に違いない。そうでなければ、あれほど自信満々に「我こそは文学非文学のメルクマールがわかる者」などと公言するような真似をするなど、合理的にあり得ないからだ。ぜひとも直接ご高説を賜ってみたいものだが、きっと無理なのだろうなあ。まったく、残念でなりません。

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