三文文士・周木律
65 ダイソンについて
ダイソンの扇風機を買った。
高かった。扇風機としてはかなり高い金額だった。
だが買った。たまにはこういう散財もしていいだろうと吹っ切れたからだ。
この扇風機には、風を送る以外の機能が付いている。温風すなわちヒーター機能と、空気清浄機能だ。
関係ないのだけれど、先日血液検査を受けた。
何の検査かというと、アレルギーである。僕は皮膚が弱い。すぐに湿疹ができて、それが痒みとともに広がっていく。アレルギー性、つまりアトピーの一種だということはわかっていたが、何がアレルゲンなのかが不明だったところ「簡単に調べられるよ、五千円でどう?」という夜の街の勧誘のような皮膚科医の一言をきっかけに、調べてみることにしたのである。
検査結果を取りに言った僕に、医者が言った。
「ほー、なかなか面白い検査結果ですね」
「面白い、とは」
「ええ。周木さんの場合、意外とスギ系は出ていないんですけれど、代わりにホコリ、ダニ系が突出して敏感みたいです」
「はぁ、それはあれですか、家が汚いってことですか」
「そういうわけではないんですが。ま、掃除はされたほうがいいですね。それと、食べ物ですが」
「食べちゃまずいものでもあるんですか」
「逆です。ひとつもありませんでした。普通はひとつくらい出るものなんですけれどね」
「つまり、何を食べてもいいと」
「ええ。じゃんじゃん食ってください」
かくして、ダイソンの空気清浄機付き温風扇風機を買った。
ご存じのとおり、ダイソンの掃除機は吸引力が優れている、らしい。そのダイソンの作った扇風機なのだから機能が優れている、らしい。特に空気清浄機能は普通のフィルターを透過してしまう微細な埃さえも捉える、らしい。
もしかしたらダイソンの口車に乗っているかもしれないと、今気付いたのだが、まあそこには目を瞑ることにする。今さら返品もできないのだし。
ところで大枚を叩いてダイソンを買ったのには、もうひとつ理由がある。
おかげさまで、重版が掛かったからだ。
大部数ではない。だが、重版は重版。読者の皆様のご支持、編集者と書店員さんのご努力あってこそのありがたい恵みである。本当に、ありがとうございます。
そして、同時に収入も増やしていただいたので、思い切ってダイソンに支出したという経緯なのだ。
風は清涼、だが懐は温かい。皆様には、心よりの感謝です。