top of page

43 火曜日について

 

 火曜日が大嫌いだ。
 理由は、火曜日には絶望しかないからである。
 一般的に、人々は月曜日を恐れているようだ。月曜日とは、土日という休日が終わり、仕事に、あるいは学校にいかなければならない日。憂鬱になるのは当然である。だが僕は、それほど月曜日が嫌ではない。なんだかんだ土日を挟めば体力は回復しているので、勢いだけで月曜日に突入することができてしまうからだ。だから僕は、言われているほど月曜日は恐れていない。小説の書き始めは必ず月曜日にすると決めているくらいである。
 一方金曜日であるが、この曜日に希望しかないことについて、まったく異論はないだろう。この一日さえつつがなく終われば、土日という快楽が待っている。「明日の今頃は遊んでいる」「あさっての今頃は寝ている」そういう妄想に浸ることもできる。金曜日は実に楽しい曜日である。
 木曜日も、意外とイケる。「おおー、あと一日を残すだけかー」この指折り数えられる感は実に魅力的である。実は週内に仕事を片付けてやろうという不埒な輩から厄介ごとが振られるおそれの高い危険な曜日でもあるのだが、それでも「あと一日」と思えば乗り越えられるのだ。かように、木曜日は希望に満ちている。
 水曜日は人により意見が分かれるだろう。だが僕は、水曜日の持つ過半感はとても素敵なものだと感じている。昼休みの「あ、今半ばだな」そして退庁時の「よっしゃあと二日」感は、とても前向きな気分を僕に与えてくれる。水曜日は、そういう折り返し地点の喜びがある曜日なのだ。
 そして、火曜日である。
 火曜日には、残念ながら一切のプラス要素がない。残り日数を数えたところで面白くもなければ、いまだ半ばにも達していない。週初めの元気ささえ、すでに失われている。いくら考えても前向きになりようがない、沈鬱になるしかない曜日なのである。
 そんなわけで、僕は火曜日には絶望しか感じていない。絶望に苛まれているから、火曜日の僕はただただブルーである。
 ということを踏まえ、この場を借りてお願いしたいことがある。
 各位におかれては、どうか僕に「火曜日の依頼」をしないでいただきたいのだ。
 仮に依頼をいただいたところで、憂鬱であるがゆえに後ろ向きな回答しか得られないだろうことは明らかである。そしてこのことは、貴兄にとっても僕にとっても、得にはなることはひとつもない。お互いのためにも、避けられるが得策なのだ。
 以上、くれぐれも、よろしくお取り計らい願います。

bottom of page