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39 四十番台について


 なんのことやらと思われるかもしれないが、つまり、第四十回から第四十九回までのメフィスト賞受賞者のことである。
 僕自身が第四十七回の受賞者であって「素数でよかった」などととち狂ったコメントをしているのだが、それはさておき、この四十番台の受賞者に関しては、近しい時期にメフィスト賞を目指し、応募し、デビューした方々となるので、先方がどう思っているかはともかく、まったく一方的な親近感を抱いている。

 ご存じだとは思うが、皆さんをご紹介させていただく。
 第四十回受賞者は望月守宮さんだ。最近無貌伝のシリーズを完結された。僕も一応シリーズを手掛けているから申し上げるが、これはすごいことだ。まだお若いのに、大したものだ。心から尊敬している作家である。
 第四十一回受賞者は赤星香一郎さんだ。デビューしてから三作を書き上げられて、今は少しお休みされているようだ。いろいろとお忙しいのかもしれないが、僕は早く次の一作を読みたいと願っている。心から尊敬している作家である。
 第四十二回受賞者は白河三兎さんだ。最近活躍著しく、どうにかして白河さんにあやかりたく感じているのだが、いかんせん作風が違いすぎる。あんな素敵な文章は、僕には書けないのだ。結局僕はいつまでも三文文士のままであるということだ。心から尊敬している作家である。
 第四十三回受賞者は天祢涼さんだ。天祢さんからは時々メールをいただく。メフィスト賞同窓会のお誘い等々だ。遠隔地にいる僕は参加することがいつも叶わず、悔しい思いをしている。僕のような粗製濫造ではなく、素晴らしいミステリを次々刊行されており、本当にすごいなあと感心しきりだ。実は天祢さんの単行本は全部家にあるので、お会いできるチャンスがあればすべてにサインしてもらうつもりでいる。心から尊敬している作家である。
 第四十四回受賞者は丸山天寿さんだ。中国史が好きで、いつかは中国モノを書きたいを企んでいる僕には、丸山さんの作風は好きすぎる。目を悪くされているというお話を伺っているが、最近はお元気だろうか。もうすぐ六十と比較的高齢であるだけに、少々心配である。心から尊敬している作家である。
 第四十五回受賞者は高田大介さんだ。高田さんに対して、僕は劣等感しか覚えない。文章、語彙、ストーリー、すべてにおいて上にあるものを目の当たりにしたとき、人は実に変な声を出すのだということを、僕は高田さんのお陰で知ることができた。心から尊敬している作家である。
 第四十六回受賞者は北夏輝さんだ。四十番台では紅一点である。まだ大学院生と伺っているが、著作を読むとまったくそんな気がしない。すごいものだ。というか、僕は北さんと同い年に何をしていたのだろう。心から尊敬している作家である。
 第四十九回受賞者は風森章羽さんだ。著作に出てくる館と、見取り図を見て、館モノ大好き、図面大好きな僕は心から嬉しくなった。風森さんもお若いらしいが、僕はすでに後塵を拝している気がしてならない。心から尊敬している作家である。
 ――というふうに、綺羅星のごとき四十番台は、本当に僕なんかがその一席に座ってていいのかと恥ずかしくなる面々である。まったく、僕はなんて時期にデビューしてしまったものか。これは僕の失敗であろう。
 さて、お気づきのことだと思うが、僕は意図的におひとりの受賞者を飛ばしている。

 そのおひとりとは、誰か。
 第四十八回受賞者の近本洋一さんだ。
 実は近本さんとは、まったく同じ号のメフィストでデビューしている。2012年Vol.3だったと記憶しているが、この号でメフィスト賞は、僕と近本さんに与えられたのだ。
 同時に同じ賞でデビュー、ということで、当然意識する。正直に白状すると、当初はちょびとライバル心もあった。
 だが、これも正直に言ってしまうが、近本さんのデビュー作「愛の徴 天国の方角」を読み、僕の自尊心はあっさりと打ち砕かれてしまった。
 これはすごい、これは僕には書けない、そして僕のものとは違う、明らかに高い価値を持ったものだ。そう、思い知らされたのだ。
 だから、同じ四十番台の中でも、近本さんは僕にとって特別な存在である。近本さんは僕がそう思っているということは知らないし、知ったところで迷惑でしかないだろうが、僕は心から、近本さんを尊敬しているのである。
 そんな近本さんが、そろそろ次作「永遠の眺望(仮)」をリリースされるという!
 実はすでに、僕はその刊行をわくわくと心待ちにしているのである。

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