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30 政治について

 

 政治については基本的に公に言及しないことにしている。こと宗教と政治と野球の話は人間関係を壊すので、しないほうがいいというのが、やはり真理だと思うからだ。
 僕の周りには、政治の話を声高にする人が多くいる。
 いわく、今の政治政策は全然なっちゃいない、俺だったらああしてこうして云々。「へえへえ」と赤べこのように相槌を打ちはするが、心の中では、だったらあんた政治家でも志したらどうよ、と思う。
 もっとも、こういうのは外野からやいのやいの言うのが一番楽しいものであることはよくわかる。自分が安全地帯にいるときほど、人は他人のことに口を出したくなるのだ。実は政治における当事者ではないからこそ、あれやこれや言えるのだ。
 そもそも政治というのは、僕なんぞが思っている以上に複雑なものだろうと推測している。
 見当違いの言い方になるかもしれないが、政治においては、多くの人間の利害関係をいかに調整するかというところが肝となるはずだ。大多数からひとつの意見を相違として導き出すのが政治の機能だからだ。その意味で政治はとても困難な仕事だ。オレハコウシタイノダ、オレガタダシイノダという理想論なら誰だって、それこそ年端もいかない子供にだって述べられる。だがそれを実現するためには、多くの利害関係者を理で説き伏せ、ときには頭を下げ情に訴える必要がある。フツーの会社の調整ですら大変な思いをするのに、いわんや大衆を相手にする政治においてをや、だ。それをできる気概も能力もないのなら、そもそも言及する資格はないのではないか。
 そんなわけで、僕は政治に関しては何も述べないことにしている。述べる資格もなければ知識もなく、批判に値するだけの汗を自分で掻いてもいないからだ。
 しかし、そんな僕の態度を見て、人は「オマエは旗色不鮮明な奴だな」と言う。ごまかし笑いで答えるしかないのだが、なんとも難しいものだと思う。

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