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3 数学について

 

 僕は数学が好きだが、専門家ではない。
 好きなので専門家になりたいと思うし、あこがれるのだけれど、残念ながら僕の頭の能力ではおいつかないのがわかっている。だから僕は、ある程度数学の外形と要点だけをつかんで「おもろいなあ」と思う、生半に数学をかじった素人にすぎないものと自認している。
 だが素人は素人なりに、数学が発展してきた歴史にはとてつもない面白さを感じているし、数学が解き明かしてきた難問をめぐるエピソードには、好事家のものとだけしておくには惜しい味があると知っている。フェルマー最終定理がどう解き明かされたかは、それこそ十七世紀から二十一世紀まで引き続く物語があるし、リーマン仮説に関してはまさに現在進行形のドラマだ。
 数学をひとつのテーマに置いて小説を書こうと思ったのも、そのためだ。
 結果として、これは成功だったと考えている。一般的にテーマとしてはとっつきにくく、しかも僕の拙い文章力で書かれた小説を、それでも面白いとおっしゃっる方が少なからずいる。これこそまさに、数学が面白さを持つことの証だ。僕には小説に関する技量が大してないので、面白いと思ってもらえたならば、それはひとえに数学のお陰なのだ。
 もっとも、僕が書いている小説の文脈は基本的になんちゃってミステリなので、数学は薀蓄と香りづけにしか使っていない。
 ほかにも面白く真面目な数学本がたくさんあるので、とりあえず僕は中継ぎとして、そちらにもつながっていけば幸せだなあ、と思う。

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