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16 猫について


 猫が好きだ。
 昔は犬派だった。猫がいる家に行くとくしゃみが出て、どうやら自分はネコアレルギーらしいと考えていたのも影響していた。だが年が経つにつれ、いつの間にか犬が苦手になり、その反作用かはわからないが、徐々に猫が好きになっていた。アレルギーテストをしてみて、実は自分はネコアレルギーではなくハウスダストアレルギーであり、猫がいる家に行くとくしゃみが出ていたのは、実はその家の埃のせいだったのだとわかったころには、もはや猫大好きになっていた。
 しかし今、僕は猫を飼っていない。集合住宅暮らしで、猫を飼える環境にはないからだ。したがって僕にできるのは、猫との生活を妄想することだけだ。
 さて、飼うならどんな猫がいいか。しばらく前までは、ロシアンブルーやアメリカンショートヘアがいいなと思っていた。どちらも猫らしい猫だし、賢くて飼いやすいというのもある。
 なのだが、つい最近、ペットショップで衝撃的な出会いをしてしまった。
 ペルシャ猫の赤ちゃんだ。
 ペルシャは長毛種の代表的なものだが、長毛種はお手入れが大変だという。毎日のように毛をとかしてやらなければならないし、家は抜け毛だらけになる。ペルシャは鼻が低いので、顔回りに健康異常を起こしやすい。
 だが、実際にペルシャを目の当たりにしてしまえば大抵の猫好きがそうなるだろうと思うのだが、まったくそんな苦労を掛けさせらることもまったく厭わなくなるほど、可愛い。しかもペルシャはおとなしく、上品だ。あまり活動的ではなく、家で静かに過ごしたい性質だというのも、僕の好みにあっている。
 もう一度言うが、本当に可愛いのだ。
 だがこれももう一度言うが、僕は今、猫を飼える環境にはない。集合住宅だからだ。
 でも、待てよ。ばれなきゃいいのか? いや、ばれたらそれはそれで大変だ。しかしよく考えてみたら、うちは集合住宅だけれど、ペット禁止という話を具体的に聞いたことはない。とすれば、もしかすると飼ってもいいのかもしれない。
 実に悩ましい。この苦しみはきっと、あのペルシャ猫が誰かに買われていくまで続くのだろう。

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