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14 ぼんぼりについて


 ○○恐怖症、という言い回しがある。
 高所恐怖症、閉所恐怖症、先端恐怖症など、有名なものはいろいろとある。本能的なものか、それとも後天的なものなのかはよくわからないが、人には人それぞれの恐怖の対象というものがあるのだ。そして時に、それは他人にはなぜ恐ろしいか理解できないものさえある。そんな恐怖の対象が僕にもある。
 ぼんぼりだ。
 よく神社が祭をするときに一定距離を置いて吊るすぼんぼり、あるいは大きめの神社であれば据え付けの灯篭が並んでいるのも似たようなものだが、とにかくあのぼんぼりが並んでいるのがおそろしくてたまらない。
 特に夜。ぼんぼりに灯がともり、道の両脇に点々と続いているのを見ると、真夏でも背筋にぞぞぞと悪寒が走るのだ。
 なぜかはよくわからない。家族は「どこかに連れていかれるように錯覚するんじゃない?」などと分析するが、そんな気もするし、そうじゃない気もする。もしかすると、ぼんぼりにまつわる原体験があるのじゃないかと親に聞いたことがあるのだが、親も別に心当たりはないよと首を傾げていた。
 僕は転勤族なのだが、ここ数年は少し都会からは離れた場所を回っている。
 つまり田舎なのだが、田舎にはまだ盛大にお祭りをする文化も残っていて、すなわちぼんぼりの列に不意に遭遇してしまうこともままある。
 したがって、最近の僕は、特に夏の夜、車を運転しているとき、不意にぼんぼりの列を見てしまうのではないかと、びくびくしながらハンドルを握っているのだ。

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